Filtra per genere

ことばランド

ことばランド

安正 前田

日常使っていることばについて、それに対する思いや、ちょっとした蘊蓄をお話しします。文章コンサルティングファーム未來交創代表の前田安正と、フリーアナウンサーのみどりーぬこと、江川みどりがお送りします。

106 - EP#102 「地方創生」といことばに、少し違和感を覚える。そもそも「地方」って何なんだろう、を考えてみました
0:00 / 0:00
1x
  • 106 - EP#102 「地方創生」といことばに、少し違和感を覚える。そもそも「地方」って何なんだろう、を考えてみました

    僕は「出身」と言われると困りんです。辞書によれば、「出身」は、どこを経て現在に至ったか、ということで、出生地や卒業した学校、勤めたところ、社会階層なども含めたものなのですが、一般的には「生まれ育ったところ」というイメージで使われています。僕は、父が転勤族だったので、引っ越しも多く、出身と言われてもピンとこないんです。 「地方」ということばがあります。最近では「地方創生」ということばもよく見聞きします。僕はこの「地方創生」っていうことばに、違和感があるのです。どの視点で見てるんだろうと思うんです。 辞書を引くと「地方」は、「首都以外の地域」って書いてあるんです。どうも、中央集権型のお上的意識がプンプン匂ってくるんです。「地方創生」ということばにも、そういう感覚が漂っているような気がしてならないんです。「地方創生」の基本政策を定めた「まち・ひと・しごと創生法」にも「地方」について、明確に定義していないんです。 僕は、町村議会の広報研修に行く機会が年に数回あります。そこで、確かに「まもなく過疎指定になる」という声も聞きます。2022年度には、総務省が「過疎地域」に指定する自治体が885市町村になりました。この制度は、1970年につくられて以来初めて、東京23区を除く全国1718市町村の半数を超えたんです。人的・経済的な差は広がっていることは間違いありません。 しかし、東京23区もそのうち過疎になる区は出てくるだろうし、地方だけの問題じゃないはずなのに、なぜか地方創生と言っている。喫緊の課題かもしれないけど、人口は1年、2年で変わるものではない。20〜30年先を見越して考えるべきです。東京だけ生き延びても仕方ないですもんね。 そこに受け継がれ、根付いた文化がいったん途絶えると、それを継承することができない。全てがなくなってもいい、という発想もあると思うんだけど、そこに生まれ育った人たちの拠り所って大切だと思います。震災などで家が失われても、やはりそこから離れて暮らすことに抵抗があるのは、当然だと思う。 東京一極集中も危機管理の問題から考えても、危ない。少数での競争は激化するだろうし、幸せ指数は減ってしまう気がするなあ。「地方」ということばの新しい語釈を考えていくべき時代にきているかもしれない、そんな気がしています。 ◇◇◇ 『伝わる文章がすぐ書ける 接続詞のコツ』(前田安正著、すばる舎)が好評発売中です。 また、『注意ワード・ポイントを押さえれば文章は簡単に直せる』(前田安正著、東京堂出版)です。絶賛発売中です。 Amazonなどでお買いも求めいただけます。 ◇◇◇ 「ことばランド」では、取り上げてほしい「ことばの疑問」や感想をお待ちしています。お便りフォームからお願いします。 ↓ ↓ ↓ https://forms.gle/v4CNrTaroSPYuMgj6 未來交創(前田安正)HP https://kotoba-design.jp/ 江川みどりHP https://www.midori-egawa.com/

    Mon, 20 May 2024 - 15min
  • 105 - EP#101 企業を支えることばの力

    トヨタ自動車は昨年度(2023年度)1年間のグループ全体の決算で、本業のもうけを示す営業利益が5兆3500億円余りとなり、日本の上場企業で初めて5兆円を超えたそうです。 売り上げにあたる営業収益は、前の年度から21.4%増えて45兆953億円となり、過去最高を更新したんですって。すごいですね円安の利益があったとはいえ、ハイブリッド車を中心に販売が好調だったんだそうです。このトヨタ自動車の会社で使われてきたことばが、ビジネス用語になったものがいくつかあるんです。 その一つに「カイゼン」ということばがあります。漢字の「改善」という言葉では、「悪い部分を良くする」という意味です。それに対して、トヨタではカタカナの「カイゼン」に「現状を満足せず、今よりもっと良くする」という意味を持たせているんだそうです。自ら課題を認識し、自ら対策を考え、改善していくということなんですね。このことばはローマ字表記として、「KAIZEN」として世界的にも活用されています。 もう一つが「乾いた雑巾を絞る」です。これは、徹底的に無駄を省いて収益につなげるという意味で使われています。すごいですよね。問題が起こったときに「なぜを5回繰り返す」と言うのもあります。「なぜ」を5回繰り返して突き詰めて分析していけば、間違いの本質にたどり着くというんです。現場の責任者が泣き出すと言われるほどだそうです。これを「5WHY分析」と言ったりするんです。 「見える化」ということばです。「システムを見える化する」というように、ビジネス用語として「見える化」というふうに使うでしょ。手元にある三省堂国語辞典第8版にも、「情報を、だれにでもわかる具体的な形にして示すこと」「何かが行われているかが、だれにでも、わかるようにする」という語釈が載っています。 生産現場で何か問題が起こったら、誰にでも一目でもわかるようにして、問題解決につなげる」という意味で、1960年代には、使われていたようです。それが2000年代に入って、一般的に使われるようになったんですね。同じような言葉に「可視化」というのがありますが、それよりも「見える」ということばを使った方が、より具体的に感じますもんね。 まさに、パナソニックの創業者松下幸之助のことばもそうですが、ことばが会社をつくる典型だと思います。優れた企業は、ことばを活かして、ことばに活かされているんだとつくづく思います。 ◇◇◇ 『伝わる文章がすぐ書ける 接続詞のコツ』(前田安正著、すばる舎)が好評発売中です。 また、『注意ワード・ポイントを押さえれば文章は簡単に直せる』(前田安正著、東京堂出版)です。絶賛発売中です。 Amazonなどでお買いも求めいただけます。 ◇◇◇ 「ことばランド」では、取り上げてほしい「ことばの疑問」や感想をお待ちしています。お便りフォームからお願いします。 ↓ ↓ ↓ https://forms.gle/v4CNrTaroSPYuMgj6 未來交創(前田安正)HP https://kotoba-design.jp/ 江川みどりHP https://www.midori-egawa.com/

    Mon, 13 May 2024 - 13min
  • 104 - EP#100 100回おめでとう記念 100にまつわることばの数々について、ゆるゆるお話ししています

    「百は10の10倍」と辞書にあります。「もも」とも読みます。「百の説法も及ばぬ」 なんて言い方があるように「多くのもの。たくさんあること」などの意味もあります。ライオンを「百獣の王」と言います。「百獣」とは「たくさんの獣」の意味です。「議論百出」と言えば「数多くの意見が次々と出ること」。 「百に一つ」は「ごくまれなことの例え」です。「予想は百に一つも当たったためしがない」なんて具合に使います。「百も承知」といえば、「じゅうぶんわかっていること」、さらに強調する時は「百も承知、二百も合点」なんて、ことば遊びのように用います。 「色眼鏡」はいわゆる「サングラス」のように色つきの眼鏡のことですが、「先入観をもってものを見ること」という、ひゆとして使われることの方が多いと思います。 ところが「百色眼鏡」というと「万華鏡」のことなんです。「百薬の長」と言えばお酒を褒めた言い方です。百というのは、多くの積み重ねを言って、一つの節目でもあるんです。これからもことばの面白さを少しずつでも、積み重ねて行きたいと思います。これからも、どうぞ宜しくお願いいたします。 6月15日20時から、すばる舎主催の『伝わる文章がすぐ書ける接続詞のコツ』出版記念の無料セミナーを開きます。ご興味のある方は、下記のURLからお申し込みください。接続詞の話を交えながら、文章の書き方についてお話しします。 https://subaru20240515.peatix.com/?lang=ja ◇◇◇ 『伝わる文章がすぐ書ける 接続詞のコツ』(前田安正著、すばる舎)が好評発売中です。 また、『注意ワード・ポイントを押さえれば文章は簡単に直せる』(前田安正著、東京堂出版)です。絶賛発売中です。 Amazonなどでお買いも求めいただけます。 ◇◇◇ 「ことばランド」では、取り上げてほしい「ことばの疑問」や感想をお待ちしています。お便りフォームからお願いします。 ↓ ↓ ↓ https://forms.gle/v4CNrTaroSPYuMgj6 未來交創(前田安正)HP https://kotoba-design.jp/ 江川みどりHP https://www.midori-egawa.com/

    Mon, 06 May 2024 - 15min
  • 103 - EP#99 天気は「下る」けれど「上る」ことはない。これはなぜだろう?

    天気は「下り坂」とは言うけれど、「上り坂」とは言わないですよね。Facebookで僕の先輩記者が「これは、なぜなんだろう」という疑問を投げかけていました。今回はこれについて、考えていきたいと思います。 この先輩は、「地政学的に言えば、坂は上から歩く人には下り坂で、下から歩く人には上り坂だ。そこにいる人の立ち位置で表現が異なるだけで、本質は変わらない」って言うんです。 確かに標高500メートルの場所が坂道だとして、そこにいる人が上るか下るかで表現が違います。ところが、標高500メートルにいるということは変わらないですよね。上に向かって歩くか、下に向かって歩くかという行動の違いについて、これをなぜ天気に使うのだろう、というんです。 これの表現の背景をちょっと考えてみたらどうかな、と思うんです。例えば、雨の日に「天気が悪い」っていう言い方をしますよね。晴れの日は「いい天気」っていうでしょ。 ところが、天気自体にいいも悪いもないはずです。「いい」というのは、僕たちにとって都合がいいとか、気分がいいとかいう感覚です。いわば主観です。晴ればかり続いて雨が降らなければ、雨乞いをするわけです。悪いものを呼び込むことになります。だから、天気がいい・悪いというのは、僕たちの主観のもんだいです。 「天気がいい」というのは、僕たちの主観として「当然いいこと」だという認識というか刷り込みがあると思うのです。だから「天気がいい」ことが通常の立ち位置になっているということです。そこから天気が雨になれいば「天気が悪い」「下り坂」というマイナスのイメージが働くのではないか、というのが僕の考えなんです。 逆の視点で言うと「天気がいい」ということが通常であれば、天気が回復することをいちいち「上り坂」という必要はないということになる。つまり、通常の立ち位置が「晴れ」なんですね。先輩の言うように、立ち位置をどこに置くかの違いかも知れません。 ◇◇◇ 『伝わる文章がすぐ書ける 接続詞のコツ』(前田安正著、すばる舎)が好評発売中です。 また、『注意ワード・ポイントを押さえれば文章は簡単に直せる』(前田安正著、東京堂出版)です。絶賛発売中です。 Amazonなどでお買いも求めいただけます。 ◇◇◇ 「ことばランド」では、取り上げてほしい「ことばの疑問」や感想をお待ちしています。お便りフォームからお願いします。 ↓ ↓ ↓ https://forms.gle/v4CNrTaroSPYuMgj6 未來交創(前田安正)HP https://kotoba-design.jp/ 江川みどりHP https://www.midori-egawa.com/

    Mon, 29 Apr 2024 - 08min
  • 102 - EP#98 怒られた、ふられた、食べられた・・・こんな受け身の表現をやめれば、心は自由になる!

    新入社員研修などが始まっているんでしょうか。そのうち上司に注意されたりするでしょ。その時の対処法をことばの観点からお伝えしようと思います。 次の例をちょっと見てください。 1)「僕のお弁当を友達に食べられた」 2)「僕のお弁当を友達が食べた」 この違い、わかりますか? 1が「食べられた」だから受動態、受け身の言い方です。2は「食べた」だから能動態です。言い方の違いが精神的に大きな違いを生むんです。 それは、受け身だと被害者意識が生まれると言うことです。「僕の大切なお弁当を、友達に食べられたなんて。腹が立つ!」っていう感じになるでしょ。 「僕のお弁当を友達が食べた」だと、フラットな感じになります。「仕方ないなあ」という許容が生まれます。受け身の被害者意識が、意外に自分を追い詰めてしまうんです。 普通「上司に怒られた」って言いますよね。この時点で、上司と自分に精神的な序列をつくっているんです。納得がいかないと「なんで私が・・・」って思い出して、夜も寝られなくなる。その結果、お酒や甘いものに走って、体がどんどん大きくなってしまうんです。 「彼女に振られた」「彼氏に振られた」も同様です。こういった途端「私の何がわるかったのか」と、自分に落ち度があるかのような感覚に陥る。失恋のほとんどはこういう被害者感情が根っこにあるんです。 これを受け身の表現ではなく能動態に変えるんです。「上司が私を怒った」「彼女が僕を振った」「彼氏が私を振った」と言い変えると、精神的にゆとりが生まれます。 「上司が、何だかわからないことを言って怒ってる」「上司が怒ってる、だから何だって言うんだ?」みたいな感覚になるでしょ。「彼女が僕を振った。僕の良さがわからないんじゃ仕方ないか」「彼氏が私を振るなんて、残念なヤツだなあ」って感じに、スルーできるようになるんです。 若い頃は、僕もよく怒られたけれど、心の中では「何を怒ってんだろうね。どうせ、そのうち異動でいなくなるし」と思っていました。 これを、ノートでも手帳でもいいから、能動態で書きとめておきます。そして、そのうえにバッテン付ける。一種の魔封じです。結構精神的に楽になります。 反省の材料だけ取り込めばいいんだから、怒られる筋合いじゃないんです。怒る人は怒っている自分に興奮しているだけだから。それと同じ土俵に乗る必要はないからね。 ことばは上手に使わないとダメなんです。そのためにもことばの勉強をして、受動態の役割などを知っておくと引き出しが増える、ということです。受け身表現で被害者感情をつくり出す必要はないからね。 ◇◇◇ 『伝わる文章がすぐ書ける 接続詞のコツ』(前田安正著、すばる舎)が好評発売中です。 また、『注意ワード・ポイントを押さえれば文章は簡単に直せる』(前田安正著、東京堂出版)です。絶賛発売中です。 Amazonなどでお買いも求めいただけます。 ◇◇◇ 「ことばランド」では、取り上げてほしい「ことばの疑問」や感想をお待ちしています。お便りフォームからお願いします。 ↓ ↓ ↓ https://forms.gle/v4CNrTaroSPYuMgj6 未來交創(前田安正)HP https://kotoba-design.jp/ 江川みどりHP https://www.midori-egawa.com/

    Mon, 22 Apr 2024 - 13min
Mostra altri episodi